ピティナ・指導者ライセンス
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図書ボランティアでのピアノ演奏(執筆:大石佳奈)

指導のいろは
図書ボランティアでのピアノ演奏

執筆:大石佳奈

小学校には図書ボランティアというものがあるのをご存知でしょうか。 ボランティアを通してピアノ講師としてのあり方や、気付き、メリット、 地域との関わりや図書ボランティアでピアノを演奏する楽しさをお話しします。

1.ピアノの音から作り出される、お客様の笑顔

学校で読み聞かせを行ったり、図書館の本の整理や修理、装飾などを行うボランティアです。全国の小学校の78、7%が図書ボランティアを活用しており(令和2年度文部科学省が取りまとめた「学校図書館の現状に関わる調査」より)その多くが学校の生徒達へ向けて読み聞かせを行っています。

2. 活動に参加したきっかけ

はじめは、小学生に生のピアノ演奏を届けたい!ですとかピアノ講師として地域貢献を!!という志しで入ったのでは決してなく…コロナ禍で我が子の学校へ出向く機会が全く無くなり、学校ではどんな様子で過ごしているのかな?様子を見てみたいな、という気持ちがきっかけでした。

3. どんなことをしているの?

年に2回、全校生徒へ向けての読み聞かせと、6年生に卒業お祝いの読み聞かせをしています。
私が活動に参加する前は、本のイメージが膨らむようにCDやYouTubeなどからBGMをかけていたそうですが、1つの曲だと場面が変わった時に音楽が合わなくなってしまうので、ぜひ本に合ったピアノの生演奏で感動を届けて欲しいと、他の図書ボランティアさんや学校の先生に頼まれてピアノ演奏付きの読み聞かせが始まりました。

こちらはクリスマス時期に行った「プレゼントの木」という本の最後の場面の音源です。
ピアノの演奏がある事で子供達が絵本の余韻に浸り聴き入ってくれています。

『プレゼントの木』いもとようこ 作絵/金の星社刊 より転載許諾済み 『プレゼントの木』いもとようこ 作絵/金の星社刊 より転載許諾済み

♪プレゼントの木の読み聞かせ演奏音源♪

読み聞かせは、授業の時間を1時間頂いて3冊の絵本を選び、体育館を暗くしてパソコンに取り込んだ絵本を大型スクリーンに映し、マイクなどの機材を用意して他の図書ボランティアが読み聞かせのセリフなどを読むスピードに合わせてピアノを演奏します。年々、大人数で大掛かりになり準備も大変な上、毎回どんな音楽にしようか本当に悩むのですが、すごく評判が良く沢山反響を頂けて、驚いています。

『100かいだてのいえ』いわいとしお 偕成社刊 より転載許諾済み『100かいだてのいえ』いわいとしお 偕成社刊 より転載許諾済み

こちらの「100かいだてのいえ」の絵本に演奏を付けた時は、10階ごとに住んでいる動物が変わるので、ねずみの階では「ミッキーマウスマーチ」カエルの階では「かえるのうた」蜂の階では「ぶんぶんぶん」など曲を変えて繋いで演奏をしました。次々と出てくる知っている曲に子供達は「あ!しってる!」と表情を明るくしたり、口ずさんで歌ってくれたりとすごく音楽にも反応してくれてとても楽しかったです。
1番盛り上がったのはコウモリの階で弾いたスーパーマリオの地下BGMで「マリオだ!」と笑いとざわめきが起こりました。
蛇が出てくる階ではアイデアが浮かばず悩みに悩んでチャイコフスキーのスラブ行進曲を弾いたのですがとても好評でした。

4. 生徒や周りの方々の反応、反響

学校生徒の反応はとても良く、「すごかった!」「またやってほしい」「​感動した」「曲が合ってた」など本の感想よりもピアノの感想を頂く方が多いのではないかというくらい喜んで頂き、子供達の心に音楽が響いてしっかり残っているんだなと音楽の力はすごいなと再確認しました。学校の先生からも子供達の素晴らしい経験になった、中休みにもやって欲しい等、感想を頂きました。
また、学校生徒の中に居るピアノ教室に通ってくれている生徒達もピアノの先生が学校にきてくれた!と会場である体育館に入って来て、手を振ってくれたりとても喜んでくれて「いいなあ〜◯◯ちゃんのピアノの先生なんでしょ〜」や、「私もピアノ習ってみたい」と言われている子が何人もいるようです。

5. メリット

我が子の学校での様子や、教室の生徒さんが喜んでくれる事。その他にも生徒や、学校、ボランティアに関わる事でより保護者の方々から信頼して頂いているように感じています。
学校に伺う事で私が小学校に通っていた昔と今ではこんなに違いがあるのかという発見があったり、ピアノ教室の生徒達が日中の大半を過ごす学校を取り巻く環境はこのようになっているのだなと知ることもできました。
学校での取り組みや先生方の指導方針などにも触れる機会が増えて大変勉強になりました。また、学校での図書ボランティア活動によって私のピアノ教室の認知度は意図せず物凄く上がりました。あそこにピアノ教室があるよねという認識から、あのピアノ教室の先生はこういう先生だよね、という認識に変わり、現在定員一杯のためホームページでの生徒募集は何年もしていないのですが地域の人伝に空きがないのか聞かれる事も多くなりました。近くの子育て広場でリトミック講座をやって欲しいと別の依頼を頂く事もありました。

さいごに

私たちピアノ講師は指導の技術を磨く事や、教室運営を学ぶ事、SNSを活用する事などピアノの先生としてしなくてはならない事が沢山ありますが、長くピアノの先生を続けて行くには、ピアノを習っている生徒さんのみが知っているお教室から、周りに認知して頂いたり地域とのコミュニケーションや、ボランティアなどの繋がりを持つ事が大切になるのではないかと思います。

大石佳奈
東京音楽大学ピアノ専攻卒業。これまでにピアノを館村たつ子、菊池麗子、野中正、ソルフェージュを手島由芙子、パイプオルガンを植田義子の各氏に師事。ヤマハ音楽教室ピアノ講師を経て、現在大石佳奈ピアノ教室を主宰。ブルグミュラーレッスン賞受賞。日本バッハコンクールinSPPORO実行委員会より3年連続で指導者賞を受賞。

指導のいろは
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