音楽教室のクリスマス会〜連弾とアンサンブル~(執筆:塚田めぐみ)
執筆:塚田めぐみ
音楽教室で実施されるイベントは2種類に分類できると考えています。1つは、演奏技術向上のための演奏・勉強メインのイベント。もう1つは、在籍生同士の交流を目的としたお楽しみイベントです。
発表会やホールレッスン、弾き合い会、ゲスト講師による公開レッスン、皆で演奏会に出掛ける鑑賞会は前者、ハロウィンパーティ、クリスマス会、新年会、交流会などは後者に当てはまります。
後者のお楽しみイベントは音楽抜きで実施することもできますが、せっかくなら音楽教室の企画らしく演奏の時間も設けられたら理想的だと思います。そこで、私の教室では季節のお楽しみイベントを「連弾・アンサンブル会」として実施しています。あくまでお楽しみのための会として企画していますが、それぞれが練習し、音楽経験を積む機会として毎年の恒例行事となりました。
このページでは、交流を楽しみつつ音楽的にも成長できる「演奏・勉強 × レクリエーション・お楽しみ」のハイブリッド企画であるクリスマス会について紹介します。
「クリスマス」と冠しているのは、イベント実施にちょうど良い時期がたまたまクリスマス付近だからです。
私の教室では例年、春はピティナ・ステップやホールレッスン、夏はコンクール、秋は発表会、というスケジュールなので、比較的忙しくない「冬」がイベント実施に最適です。
もしもホール予約の関係などで発表会の時期が変わる場合には、「秋の連弾会」や「ハロウィン連弾会」など季節を変えて実施することもあるかもしれません。
クリスマス会のメインイベントは ①連弾演奏会、②オリジナルアンサンブル の2つです。時間や部屋のスペースに余裕があれば、③音楽ゲーム大会 も実施できます。ここでは、上記の①連弾演奏会と、②オリジナルアンサンブル ついて紹介します。
みなさんが普段使っている教本に、連弾曲も載っていませんか?
私が教室でメインに使用しているテキストの1つ、『新版 みんなのオルガン・ピアノの本』(ヤマハ)にはテキストの最後に連弾曲が載っています。レッスンの中で講師と連弾することもできますが、これらの連弾曲は「先生と生徒」の想定ではなく、「生徒と生徒」で演奏できる難易度設定になっています。そこで、子どもたち同士で連弾できる機会があれば、と企画し始めたのが最初のきっかけでした。
普段の教本以外にも、コンクールの連弾低学年部門の課題曲やクリスマスソングの連弾曲集からも選曲します。
お楽しみだけでなく音楽的な学びも絡めたハイブリッドイベントとして企画しているため、参加資格は「課題曲の中から1パート以上練習できる方」としています。課題曲の難易度を①未就学、②小学生低学年、③小学生高学年に分けて選曲しておくと、参加者それぞれの年齢や習熟度に対応できます。もしも課題曲が難しすぎる場合には音数を減らしたり、片手だけでもOKにしたりして気軽に参加できるよう工夫します。
連弾のペアは事前に告知せず、当日に発表です。このドキドキ感も練習を頑張るモチベーションに繋がり、「ゆっくりしか弾けないお友達もいるかもしれないから、ゆっくり弾く練習もしよう!」「もしもお友達が途中で間違えても慌てず合わせてあげられるように、どこからでも弾けるようにしておこう!」など、普段よりも丁寧に練習できます。
連弾でペア同士の交流はできますが、全体での交流は図りにくいため、全体でのアンサンブル曲も企画します。このアンサンブルはベースとなる曲を事前に決めておき、当日参加者からアイディアを募って曲を完成させるようにします。
例えば、「ドレミの歌」。
普通に歌うのではなく、替え歌にして歌います。「ドはドーナツのド、が普通だけれど、今日は特別に変えよう!ドは何のドにする?」と参加者みんなで考えます。ドラえもんでも、どんぐりでもなんでもOK。レは冷蔵庫、レンコン・・・みんなで案を出し合ってド~シまで決めていきます。知っているドレミの歌ではなく、参加メンバーでその場で急遽決めた替え歌を歌うので、みんな普段以上の集中力を発揮して取り組んでくれます。
他にも、クリスマスソングや季節の歌などを歌う場合には、様々な工夫をしながらその日そのメンバーだけの特別な演奏を作ることを心がけています。
- みんなに簡単な振り付けを考えてもらう
- 細かく役割分担をして1フレーズごとに歌う箇所を割り振る
- リズムパターンの案を考えてもらい、ボディパーカッションをつける
振り付けや自分に割り振られたフレーズを覚えるため、替え歌と同じように集中力を発揮して楽しく取り組むことができます。オリジナルアンサンブルは当日の参加者だけが知っている秘密の「スペシャル版」となるので、皆の仲間意識が生まれて交流を深めることにも繋がります。
準備は2~3ヶ月前から始めます。
事前準備 |
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当日 |
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当日の集合からリハーサルまでは保護者なしで講師と子どもたちだけで活動し、保護者は演奏会の開演に合わせて入室します。部屋のスペースの都合もありますが、演奏会本番時のみ保護者が入室することでお楽しみモードでテンションが上がった状態の子供たちでも、すんなりと演奏モードに変身することができます。
保護者なしで子どもたちだけをお預かりするため、講師一人につき10名程度までの参加者、としておくと安心です。限られた時間の中で全員が演奏できるよう、参加人数を制限する必要もあります。経験上は、講師2人で参加者20名程度まで、集合から解散までが90分~120分、というのがちょうど良いと感じています。
客席を設けるスペースがない場合には、演奏会本番を動画で撮影して後日保護者にシェアする方法もあります。以前、演奏動画をYouTube用に編集して参加者の限定公開にしたところ、とても好評で、家族で繰り返し見て楽しんでいるというお声を頂いたこともありました。動画を繰り返し見ることでお友達の顔もどんどん覚えていくので、発表会など別のイベントに参加する際にも「知っているお友達がいる」という安心感にも繋がります。
発表会や勉強メインのイベントと異なり、比較的自由でのびのびと活動できるクリスマス会では、なるべく子どもたちに相談しながら自主性やアイディアを汲み取るようにしています。
例えば、連弾課題曲を練習しているレッスン中にも子どもたちから
「クリスマス会だから、みんなクリスマスの格好をしたら?」「クリスマスだからみんなで歌うのはジングルベルがいいんじゃない?」「(レッスンに通っていない)学校のお友達も誘いたい!」など、嬉しい提案をしてくれたりします。
「学校のお友達を誘ってもいいよ!その代わり、みんなと一緒に連弾したいから、〇〇ちゃんがそのお友達に連弾曲の弾き方教えてあげられる?」
と対応すれば、その子が曲に対する理解を深める絶好の機会を作ることもできます。
連弾やオリジナルアンサンブルを発表する場では、必ず一人ひとりが特別に活躍できる場を作ります。例えば、「今からコンサートを始めます」というような司会進行のアナウンスを任せたり、みんながお辞儀をする際の合図を出す係を任せたり、オリジナルアンサンブルの中で特別にハンドベルを担当してもらったり・・・
後日、「〇〇ちゃんはアンサンブルのリーダーで大活躍だったね!」「〇〇ちゃんの司会進行、とっても上手だった!」「〇〇ちゃんのお陰でみんなのお辞儀が揃ってうまくいったね!」など、演奏に関すること以外でも一人ひとりの活躍を振り返ることでそれぞれの自信にも繋がります。
コンクールや発表会と異なり、比較的易しい曲で連弾体験できるクリスマス会は、程よい息抜きになると共に、ピアノに対するモチベーションアップのきっかけにもなります。クリスマス会で出会って仲良くなったお友達同士で連弾のコンクールに挑戦したり、「もっと一緒に連弾できるお友達を増やしたい!」と、まだピアノを習っていないお友達を教室に誘ってきてくれたり、クリスマス会を通して教室も活気付いていると感じます。
「また練習頑張って来年もみんなと一緒にクリスマス会をしたい!ピアノ頑張りたい!ピアノって楽しい!」クリスマス会の感想でいただくこの言葉が、私にとって最高のクリスマスプレゼントになっています。