楽しさが成長へ!教室イベントの魅力(執筆:桃原聡子)
執筆:桃原聡子
教室を開いて今年で10年。教室を開いた当初は、イベントというと年一回の発表会だけでした。
生徒のやる気を引き出すには?本番に弱い生徒がステージで堂々と演奏するには?アコースティックピアノで練習してもらいたいけど…など、様々な悩みや葛藤があり、結果的にこれだけたくさんのイベントが生まれました。実施しているイベントをいくつかご紹介します。
小中学生を対象に、三者面談ウィークを設けています。普段は次々と生徒がレッスンに来るので、なかなか落ち着いて話をする時間もありません。この期間は通常レッスンをお休みにして、普段の練習で困っていることや言いにくい悩みがないかお話をじっくり聞きます。この時に、生徒にどんな課題があって、この1年間でどんな成長があったかを私からお話したり、レッスンの目指す方向性に生徒さんとのずれがないかを確認します。
発表会での連弾への参加や、ステップやコンクールなどの参加の意思も確認しています。参加したくない生徒に無理やりすすめることはしません。面談を始めてからは、「コンクールやステップを受ける場合の流れや心持ちをじっくり説明してもらえるので、安心して挑戦させられる」と言ってくださる保護者の方が増えました。
年1回の発表会しかイベントがなかった頃、コンクールやステップなどを受けない生徒にとっては、1年の中で、ステージで演奏する機会が発表会だけのたった1回となってしまいました。発表会以外の期間をなんとなく過ごすなんてもったいない!と思い立ち、5月のグループコンサートを始めました。もともとはコロナ禍に企画したイベントで、発表会よりも短時間で少人数、もっと気楽に出られるコンサートがあったらいいなと思って始めました。普段の教本の曲を、より美しく弾くことを目標にして取り組みます。ステップやコンクールを受ける生徒にとっては、このコンサートがリハーサルの機会にもなります。
発表会の3週間前に、一人6分~12分の持ち時間の中で舞台リハーサルを行います。長い曲を演奏する生徒はまず、リハーサルの日までに規定時間内におさまるようテンポを上げて、仕上げていきます。舞台での演奏に慣れない生徒には、お辞儀から練習して本番で落ち着いて演奏ができるようリハーサルをしています。
リハーサルをすることで、発表会本番での演奏の完成度が上がり、大きな失敗をする生徒も少なくなりました。生徒自身も、本番の前にまずはリハーサルに向けて曲を仕上げようという目標が明確になったと思います。リハーサルでうまく弾けなかった生徒は、本番では成功できるように、普段の練習をより集中して取り組めています。リハーサルでお友達の演奏を聴いて自分も頑張らないと、とモチベーションが上がる生徒もいるようです。発表会での取り組みについては別の記事に詳細にまとめましたので、よろしければご覧ください。
コンクールの予選、本選前は、コンクールに参加する生徒だけを集めてリハーサル会を実施しています。一人ずつ通し演奏とホールレッスンを行い、一通り演奏を聴いて、良かったところ、改善するところの両方を伝えています。自信を失ってしまわないように言葉選びに気を付けながら、何ができていないかを本人が意識できるように伝えています。本番が近づくと一人ずつにメッセージを書いた手作りのお守りを渡しています。先生のお守りはご利益がある!!といつも喜んでくれています。
私は大学院卒業後からずっと金子勝子先生のもとで指導法と演奏の両方を勉強させていただいています。そのご縁もあって月一回、指導者が集まる「研修レッスン」でまとめ役をさせていただいています。コンクールを受ける生徒はもちろん、コンクールに参加しない生徒も、レッスンを希望する生徒は、研修レッスンで金子先生にご指導をいただいています。普段教えている生徒をレッスンしていただくことで、生徒の弱点に対してどんな声かけをしていただけるか、どんな練習方法を提案していただけるか、間近で見て学べることが私自身もとても勉強になっています。生徒も私以外の先生からアドバイスを頂けることが刺激になり、褒めていただけると励みになっているようです。
電子ピアノを使って練習している生徒さんにとっては、アコースティックピアノと電子ピアノの違いがよくわかっていないこともあるようです。
どうやったらその違いを理解してもらえるか、アコースティックの必要性を感じてもらえるかを悩んでいたところに、銀座山野楽器さんからの全面協力があり、ピアノツアーを開催することができました。
グランドピアノとアップライトピアノの構造を目の前で見て、触って、弾き比べもできる贅沢な内容で、今も不定期で開催していただいています。
教室のピアノを新しく、YAMAHAのC3Xespressivoに買い替えました。いつもの教室で聴くグランドピアノの音の響きの良さを実感していただけたことも、生徒さんの意識が変わったきっかけだったかもしれません。生徒さんの方から「響きの良いピアノで練習したい」と言っていただけるようになり、これまで電子ピアノを使っていた方が、アップライトピアノに、アップライトピアノだった方がグランドピアノに買い替えることが増えました。
音質の違いを生で聴いて、実感していただくことがアコースティックの必要性を感じていただくために必要なことなのかもしれません。
夏のコンクールが終わり、12月の発表会に向けての練習が始まる9月頃に、毎年、音読みランキングを開催しています。コンクール期間中も普段の教本を並行してレッスンしていますが、一定期間課題曲に集中すると、音読みがあやしくなってしまう生徒がいます。発表会前にもう一度音読みを確認して、読むスピードを上げておくために始めたのがこの企画です。小中学生を対象にして1音ずつの音読みや、和音読み(読んで、弾く)を1分間で何枚読めるか記録をつけていきます。「10位以内に入れるようにがんばってね」と生徒たちには声がけして、10位までのランキングを作成しています。生徒数が多いので10位以内に入ることも難しいのですが、音読みが苦手な生徒に劣等感を抱かせないように10位より低いランキングは出していません。結果は教室内に1年間掲示しています。音読みは繰り返し練習することが大切なので、ご家庭で音読みを記録していただいたり、レッスンの待ち時間の間にも、教室のタブレットに入っている音読みゲームのアプリで遊びながら読む練習をしてもらっています。
ハロウィンの1週間前からハロウィンウィークが始まります。この期間は、入り口にお菓子コーナーを作って、レッスンが終わった帰りに好きなお菓子を選び持ち帰ってもらっています。1年に1回のお楽しみウィークです。
200マス練習カードを活用して、1回練習したら1マス、というようにご家庭で練習の記録をつけていただいています。はじめに、集中してできる練習時間を決めて、練習した日付を書いてきてもらうことで1週間の練習記録が可視化されていきます。色を塗ったりシールを張ったり、練習するごとに絵が浮かび上がるなど、ご家庭によって工夫しながら進めていただいています。クリアした生徒さんは、賞状とプレゼントをお渡ししてレッスン内で表彰して、おたよりにお名前を掲載しています。
プレゼントをもらえることがモチベーションになり、生活の中に練習するサイクルを定着させることが目的です。
新しい取り組みを始めるたびに、生徒たちがついてきてくれるのか…不安に思う時もありました。しかし私が予想していた以上に、生徒たちが積極的に取り組んでくれたことで教室のイベントが一つ一つ定番化していきました。このようなイベントを取り入れたことで、生徒たちのモチベーションも、演奏のレベルも、自然と上がっていきました。子どもたちは無限の可能性を持っていて、普段のレッスンだけではなく、教室のイベントを通したさまざまな体験からも成長することができるのだと感じています。