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外国語コミュニケーション(執筆:玉置マンシュールスシアナ)

指導のいろは
外国語コミュニケーション

執筆:玉置 マンシュールスシアナ

ここ数年、日本ではグローバル化とデジタル化の両方が急激に進み、その結果として、音楽教室でも外国人の生徒が増えました。実際に私の教室の周りには、アメリカ、中国、韓国などの国から来た生徒が通うインターナショナルスクールがいくつかあります。
音楽教室においても、グローバル化により、文化や価値観、考え方の異なるさまざまな生徒を受け入れることが求められています。文化を否定することなく、国によって異なる背景や考え方があることを認め、お互いを尊重することが大切です。それは生徒と先生の間だけではなく、生徒同士でもこのような考え方の多様性を共有し、尊重し合えることが必要だと思います。
この項目では、どの国から来た人であっても音楽を学ぶ機会を持てるような教室環境づくりを目指している、私の教室事情についてお話します。

1.コミュニケーション

私は英語、中国語、インドネシア語、日本語のレッスンを提供していますが、音楽やピアノなどもコミュニケーションの一つです。
言葉の壁は怖いものですが、音楽にはどんな溝も埋めてくれる力があることを忘れないでください。外国人のお子さんが日本に住んでいる場合、生活する中で日本語を徐々に理解しはじめるので、日本語でレッスンをすることにあまり抵抗がないのが現状です。
しかし、保護者とのコミュニケーションでは、言葉の壁が立ちはだかります。入会時やその後の手続きで、レッスン方針や料金などの詳細を説明することが欠かせません。便利な時代になった今、難しい話をするときは、翻訳アプリを活用して対話することも場合によっては取り入れても良いかもしれません。また、直接会って話すよりも、LINEやメールなどのツールを活用して、文章でやりとりする事で、双方にとって再確認したり、スムーズなコミュニケーションが生まれてくるからです。

2.レッスン形態

レベルに関係なく、月謝は回数制を採用しています。当初は、生徒が使う教材によって月謝の金額を変えていましたが、すでに自分の教材を持っている子に対してその教材を使用することも出てきたため、レベルに応じた月謝体系が現実的ではなくなりました。インターナショナルスクールに通う子どもたちは、長期休暇を取るなど、日本の学校とは異なる年間スケジュールを組むことが多く、例えばアメリカのインターナショナルスクールでは、6月中旬から8月下旬まで夏休みがあるのが一般的です。中国と韓国の生徒は旧正月の休みを利用して一時帰国したり旅行したりします。彼らにとっても、回数制の方が融通がきくので通いやすさがあるかもしれません。
支払い方法は、月謝の振込又はQRの支払いを導入しています。外国人の方だと、金額をぴったり入れない方が多かったり、その場で金額を確認してほしいという要望があったりするため、事務作業によってレッスン時間が削られてしまうのはもったいないと感じ、手渡しではなく振込又はQRの支払いに切り替えました。また、生徒によっては日本の口座を持っていないこともあり、銀行振込だと手数料が高額なこともしばしばあるので、そんな時はPayPayのようなQRコード決済が選択肢に入るかもしれません。

3.教材

私の生徒たちは、バスティン、ピアノ・アドベンチャーズ、トンプソン、ハノンやバイエルなど、アメリカ、中国、韓国、日本など様々な国から数多くの学習教材を持ってきます。子どもたちが自分の納得のいく教材で学びたいという気持ちはよくわかりますので、そのような要望にも応えられるように努めています。せっかく日本に来ているので日本の教材を使いたいという生徒もいます。
もともとは、見たことのない教材で教えることに不安がありましたが、生徒がこれまでにたくさんの教材を持って来てくれたおかげで豊富な教材を知る事により、選択の幅が広がりました。今は外国語で出版されているものであっても、たいていは日本語版や英語版が簡単に入手できますので、場合によってはそういったものも合わせて活用しています。また、これは外国の生徒に特化したことではないですが、結局のところ、生徒側のニーズに合わせて最適な教材を選ぶことが重要だと思います。生徒の希望や要望によって、日本語で教えたり、母国語で教えたりします。音楽は楽しいことを第一に考え、常にフレキシブルに対応することを心がけています。

4.イベントの実施

発表会はやはり、一番エネルギーを使うイベントです。全員に参加してもらうには、特に日本の学校とインターナショナルスクールのスケジュールを考慮する必要があります。外国の生徒の中には、休みを利用して一時帰国することもあるため、先に選曲したり、練習スケジュールを逆算するなど、事前に気持ち細かめに計画を立てるようにしています。これは私の経験に基づきますが、比較的生徒が参加しやすい時期は、11月下旬〜12月中旬、3月下旬あたりでした。
発表会のプログラムをはじめとする書類一式は日本語と英語で対応しています。日本では発表会といえば立派なホールで演奏することが多いですが、海外での発表会ではそういう文化はあまりありません。どちらかというと、庭やサロンなどの小さな会場で身内で楽しむ催しという感覚です。そのため、発表会を開催する時には、どういうイベントであるのか、当日の雰囲気をしっかり伝えてあげると良いかもしれません。
教室主催でやることが難しい時には、ピティナ・ピアノステップを活用しています。発表会の代わりとして、日々の成果発表の場として生徒には進めています。参加するにつれてステージポイントが加算されていくので、その分、生徒自身のやる気にも繋がっていってます。

2023年の発表会のプログラム

何度も繰り返していますが、大事なのは言語そのものではなく、音楽を通じて生み出されるコミュニケーションです。外国人の生徒と日本人の生徒が連弾で組んだり音楽の輪が広がります。ピアノは楽しく、そして良い質も求めたい、というのが私の課題です。
どんな教室でも先生でも外国の生徒さんを受け入れることは可能だと思っています。ただ、そのためには、異文化・相手の立場を理解し、一歩下がって対応することが必要です。理想の教室あるいはレッスンに生徒を当てはめるのではなく、生徒側にある程度歩み寄ることも大切かもしれません。この事を念頭に、外国の生徒を受け入れるという事をそれぞれの指導スタイルとのバランスで考えてみてはいかがでしょうか。

玉置 マンシュールスシアナ
インドネシア出身。高校卒業してから来日し、ヤマハ音楽院エレクトーン科修了後に、財団法人ヤマハ音楽振興会ヤマハ音楽教室システム講師を30年、ヤマハ英語教室講師を7年務める。現在は横浜中区でピアノ&エレクトーン& 鍵盤ハーモニカの個人レッスン、保育園で英語リトミック講師を担当。
エレクトーン演奏グレード3級、ピアノ演奏グレード4級、指導グレード3級、SUZUKIケンハモ認定講師、SUZUKIケンハモ音楽呼吸法認定講師取得他に、「Joyfully」のグループ名でリトミック・エンターテイメント演奏活動を行う。日本語、英語、インドネシア語、中国語を用いて、クラシックの基礎を基準に、ポピュラー及びジャズを組み合わせて、年齢に応じて段階的にレッスンを実施。Tanto Tanto Music Scoreのアレンジャーとして活動中。
指導のいろは
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