Vol.52 牧子はるか先生「客観的に指導の癖を見直す」(2021年度全級合格)
埼玉県所沢市/正会員/2021年度全級合格
音大を卒業し、一般企業からピアノ講師に転職し7年経った頃、ピアノ指導者として分からないことが多く、このままだと生徒に申し訳ないと思ったことがきっかけとなり、チラシを見て指導者ライセンスへの挑戦を始めました。当初は全級合格できるとは思っておらず、「たとえ中断することがあってもできる限り学んで多くのことを生徒に伝えられるようになりたい」と思っていました。細々と進めるうちに合格修了スタンプがたまっていくのが嬉しく、結局中断することなく受検を続けていましたが、最後の演奏実技に時間がかかってしまってこれで最後にしようと思った時に全級合格することができました。
筆記試験のためには、過去問を解いたり、eラーニングの筆記試験対策講座を見て作曲者や曲の時代背景を調べ、日々暗記に使えるようにレジメを作り、試験前にもう一度eラーニングを見るという方法をとりました。大学時代にも習っていない音楽用語も知ることもでき、日々の勉強は楽しいものでした。
指導実技試験は、課題曲が発表されたらeラーニングや名曲解説全集などで曲目やレッスンのポイントの情報をチェックし、和声分析して弾いて準備しました。演奏実技試験は、様々な先生にレッスンをしていただき、初見視奏試験は初見の本を一冊弾き、シューマンのユーゲントアルバムでも初見の練習をしました。
受講した講座の中では、西尾洋先生の「ゴリウォーグのケークウォーク」についての講座が興味深く特に印象に残っています。また指導実技についても、
指導力のある先生方の貴重なレッスンをたくさんeラーニングで拝見することができ、役に立ちました。
( 特集「レッスンがもっと好きになる! 「学ぶ指導者」になるための習慣のつくり方」でもeラーニング活用法をご紹介しています)
2020年のコロナ禍、楽しみにしていたレッスン見学も中止となり、あらゆる試験をオンラインで受検させていただいたことは、良い経験となりました。実地では初級全てと中級の筆記試験と演奏実技、指導実技、上級指導実技を、オンラインでその他の筆記試験、演奏実技、初見視奏、指導実技を受検し、上級の指導実技と演奏実技、初見視奏では動画提出型も活用しました。
特に初見視奏と指導実技はとても緊張しましたが、このことが自分のオンラインレッスンを見直すきっかけとなり、以前よりも優先順位を整理してレッスンできるようになりました。コンペが中止となった年は課題曲四期チャレンジにたくさんの生徒が参加させていただき、私も生徒と同じ気持ちで一緒に実技試験の練習をしました。オンライン演奏実技試験はとても厳しいものでしたが、客観的に講評と点数をつけていただけたことで改善の道筋が見え、自信を持ってレッスンに臨むことができるようになりました。どの先生方も講評を裏までぎっしりとたくさん書いてくださり、ありがたく、その後何度も落ちてしまいましたが合格するまで参考にしながら受けさせていただきました。
指導実技試験で得たことはとても大きいです。指導者ライセンスを受けなかったら、今でも以前のままだったかと思うと怖くなります。
ご指摘頂いたことは、例えば、声が小さいこと、生徒への話しかけが足りないこと、2台あるのだからピアノでお手本をもっと弾くとよいこと、教える優先順位、調べてきた能書きよりもポイントを絞ることの大切さ、お手本の弾き方、バロックの指導方法など、ありがたいご指摘をたくさん頂きました。回数を重ねるごとにリラックスできて徐々に慣れていきました。指導実技試験では、恥ずかしながら弾いたことのない曲を勉強することもあり、緊張しました。受検後もいただいた講評を何度も見直し、普段のレッスンでも、その時に一番伝えた方がよいことを順序立ててレッスンすることを意識するようになり、活かされています。
指導者ライセンスを通じて本当に良かったと思うのは、素晴らしい先生方との出会いです。指導者ライセンスを受ける前からお世話になっている先生方にも感謝しきれませんが、指導者ライセンスを通じて、新しく貴重な出会いをいくつもさせていただきました。初級の筆記試験の時に出会った先生は、その後ステーションを立ち上げられ、ステップのお手伝いに呼んで下さり、そこでのとても優秀な同年代の先生方との出会いも貴重でした。中級の演奏実技の時にお会いした先生とは、上級指導実技の勉強をオンラインで一緒に楽しくさせていただきました。またそのご縁で、全級合格に導いていただいた松浦友恵先生を紹介していただきました。指導実技試験会場で知り合った先生方と、帰り道に情報交換をさせていただく機会にも恵まれました。優秀で熱心な先生方との出会いは、視野が拡がる嬉しいものでした。指導者ライセンスを通じて、指導者ライセンス以前もこれからもお世話になった先生方に感謝したいとあらためて思い、今後も大切にしていきたいと思います。
大学を卒業してしばらくは銀行で外為事務をしていました。英文をタイピングする仕事もあり、ピアノが弾けるとタイピングが速く重宝されます。順序立てて後輩指導もさせていただいたこともピアノ指導に役に立ちました。一般常識を教えて頂いたこと、さまざまな年齢の方との仕事は、今となっては、相手の立場を考える上で役に立っていると思います。
現在ピアノ講師として仕事するうち、特にコンペティションでは毎年ドラマがあり、参加させて頂いて10年くらいになりますが、毎年のことをよく覚えています。日々、生徒の成長に寄り添えて、本当に素晴らしい仕事だと思います。導いてくださった先生方に大変感謝しています。
自分の力不足と思えることにも、指導者ライセンスでは親身に大変細やかに丁寧で素晴らしいご講評をしていただけます。また、先生方との繋がりができると日頃のレッスンについて相談させていただける機会も増えます。落ちて時には残念に思うこともありましたが、得るものがあれば生徒へ伝えられることも増えるので自信に変えられます。ぜひ、収穫をこわがらずチャレンジしてみてください。