Vol.48 杉山ゆかり先生「指導実技で磨いたレッスンづくり」(2021年度全級合格)
岐阜県大垣市/正会員/2021年度全級合格
13年ほど前、ピアノ教室を始めて2~3年のころ、自宅教室を軌道に乗せるために何かできることはないかと模索していた時に指導者ライセンスに行きつきました。「指導者のため」に特化した、4期をきちんと弾いて、指導もして、という他にはない資格試験だと感じました。
大学在学中もピアノ指導法のような講義もあり、勉強はしていたつもりなのですが、やはり指導しながら勉強するとなると観点も変わってくるので、良かったなと思います。
他の大手楽器店のグレード試験なども受けたことはありますが、私の今の仕事に直結しているのはこの指導者ライセンスだと感じています。今は受け終わってしまったことが寂しいと感じるくらいです。
特に「指導実技」はこれまでにない試みで、試験を受けるにあたって、自分自身も実際に教則本を弾いて確かめたり、指導法を学ぶためにセミナーを受講したりと、充実した時間でした。
中級は2年で取得し、その後出産などもあったため時間はあいたのですが、家族の協力のおかげで勉強を続けることができました。また、実際の試験では明るい雰囲気を意識して臨み、審査員の先生からもあたたかいお言葉をいただいたことをとても鮮明に覚えています。先生方のあたたかみや人間的な部分を知ることができて、いい試験だなと思いました。特に上級演奏実技と初級演奏実技は、準備に長い時間をかけました。一番最後に受験したのは初級の演奏実技でしたので、初級の教材研究にもかなり時間をかけることができました。
初めて指導者ライセンスの試験を受けたとき、初見演奏で不合格になったくらい、初見が苦手でした。そこで、初級演奏実技は選曲の時点で、いくつもの教則本や曲集を丸々一冊勉強するということをたくさんしました。興味の赴くままに、いろいろな作曲家や教則本に載っていない曲を調べたりもしました。この経験は、初級演奏実技のモチベーションを高めることと、初見演奏のトレーニングのために大変効果的だったと思います。今はそうした勉強を通じて大好きになった様々な作曲家や作品を、講師演奏で演奏したりしながら広めていきたいと思っています。
ツェルニーは私自身が楽しんで弾いていた記憶がないので、生徒にもあまり弾かせていません。モシュコフスキーは易しいながらも音楽的要素が多く含まれていて感動したのを覚えています。ブルグミュラーも弾きたい曲を渡すようにしています。ブルグミュラー程度で弾けるショパンの小品も多く、ブルグミュラーとショパンの違いは生徒たちも分かります。どちらの方が高いモチベーションで取り組めるかというと、やはりショパンやシューマン、チャイコフスキーなどの作品です。
私自身もブルグミュラーは数曲レッスンを受けた程度で、あとは自分で好きに弾いていました。初めてショパンのプレリュードを小学校高学年で弾いたときの感動はやはり忘れられないです。生徒たちが大人になったときに、「ブルグミュラーまでは続けた」と思うのと、
「ショパンやシューマンの小品を弾いた」記憶があるのとでは、その後のピアノ人生が大きく変わると思っています。ブルクミュラーレベルで弾ける大作曲家の小品をなるべく沢山把握することは、ピアノ指導者の使命のような気がしています。
大学在学中はアンサンブルが必須科目で、一時期は通奏低音をピアノ以上に練習して、バロックアンサンブルのクラスでチェンバロを担当していました。ある程度の決まりはあるものの、特に右手は自分で考えて弾くのが楽しかったです。演奏者の裁量に任されているのが面白くて、夢中になって弾いていました。
そんな経験から、レッスンでは生徒の弾きたいポピュラー曲のアレンジもその場でできるのですが、最近はなるべく生徒に考えさせるようにしています。伴奏付けや理論の指導も、生徒の能力に応じて指導しているのですが、楽譜が読めない子ほど、喜んで考えてきます。
バスティンのピアノパーティーを修了して全調の把握ができている生徒から、グループレッスンを取り入れています。聴音や楽典、作曲家のことなどを月2回見ていて、3年目のクラスでは実際の名曲を聴音教材として使っています。聴音をしてみると、曲の理解が深まると感じています。ピアノ作品だけでなくオーケストラ作品の聴音をしたり、季節に合った曲などを取り上げて伴奏付けや自分のアレンジを作るように指導していることもあります。
まだ受けていない先生は、ぜひ受けてみてください!受けてみると何が良いのか、よくわかると思います。指導者ライセンスのいいところは本当にたくさんあるのですが、実践してみないとわからないことがあるので、こうした実践の場をぜひ活用してください。