ピティナ・指導者ライセンス
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Vol.29 山口愛先生「良い音楽は良い指づくりから」(2020年度全級合格)

合格体験記
vol.29
山口愛先生

千葉県四街道市/正会員/2020年度全級合格

娘がきっかけで導入期指導の勉強、そして金子勝子先生との出会い

音大を卒業後、地元の広島で地域の病院や施設を友人たちと回って演奏活動をしていましたが、結婚を機に千葉へ移住し、全く知り合いのいない地で演奏活動をすることもなくなり、しばらくは育児に励んでいました。

長女が3歳になった頃、導入期の小さな子どもにピアノを教えるには、どんな教材を使い、どういう指導をすれば良いのかを改めて学び直したいと思うようになり、ピティナを知り入会しました。育児の合間をぬって講座に足を運び、ちょうど導入期にあたる娘に、色々な教材を試したりコンクールに参加させてみたりと、自身で娘を指導しながら指導法を学びました。

そんな試行錯誤の中、縁あって出会ったのが金子勝子先生でした。金子先生に娘のピアノをみていただきながら、私にとっては毎回が贅沢なレッスン見学となり、一から指導法を学べる大変貴重な時間となりました。それからしばらくして自分の時間が少しずつできるようになり、自分でもまたピアノを弾きたいと思うようになりました。それを金子先生に相談すると「ピティナの指導者ライセンスというのがあるから、全級取得目指して頑張ってみたら?」と勧めていただき、受検を決めました。

恩師・金子勝子先生と
演奏実技での2つのこだわり

演奏には十数年のブランクがありましたが、2つの事にこだわり演奏実技の準備をしました。

一つは、初級〜上級まで全て暗譜で臨むこと。曲は金子先生から勧めていただきましたが、中級・上級の曲は今まで弾いたことがないものがほとんど。学生時代に戻ったようで新鮮でしたが、人前で弾くのは十数年ぶり。たとえ楽譜を見て演奏したとしても覚える位弾けていないとパニックになるのは想像できたので、片手ずつ、特に左手の暗譜に時間をかけました。そしてビデオに撮ったりと本番に近い緊張感を自ら作って、何度も通し練習をしました。

二つ目は、学生時代にあまり弾いてこなかったショパンの曲を、どうしても金子先生から直々に教えていただきたくて、上級のエチュードを含めロマン派は全級ショパンの曲を選んだことです。そこで大変役立ったのが「指セット」の教本です。30分以上かけて毎日「指セット」を念入りにやりました。「指セット」は曲の中でも応用でき、例えば速いパッセージで転んだり指が動かない時は、ひたすらそこを連打練習します。嘘みたいに指が動くようになります。受検を経て先生の「指セット」の素晴らしさを身をもって体感しました。

コロナ禍前のお教室のクリスマス会の様子
筆記対策、審査員からのアドバイスが現在の指導に生きる

指導実技は、試験の一週間前くらいにレッスンする曲が分かり、その内どれが当たるかは当日決定するということで、全曲の譜読みとイメージトレーニングをして臨みました。けれど本番はそう上手くはいかないもので、自分の指導力のなさに落ち込み、恥ずかしい思いを沢山しました。それでも審査員の先生方から次に繋がるアドバイスを沢山いただけるので、まだまだ伸びしろがある証拠だ、と前向きにとらえながら受検を続けました。

筆記試験の対策は、eラーニングで対策講座を見たり、学生時代の本を読み返したりして楽しみながら勉強できました。特に秋山徹也先生の対策講座はとても分かりやすく、アナリーゼが曲の演奏にどう活かせるのか、現在指導する上で常に考えるきっかけになっています。

論文は、テーマを決めたら、空いた時間にノートに箇条書きで思い付いた事を書き込み、少しづつまとめていきました。

初めて課題曲4期チャレンジに挑戦する生徒さん
金子先生からの学び―音楽を仕事にできることに感謝する、謙虚な気持ち

金子先生のレッスンでは、音楽の方向性、何を言いたいかが判るフレーズ、バランス、というものを常に意識させ、その人の良いところを伸ばす指導をしてくださいます。さらに先生の考案された「指セット」は、十数年ブランクのあった私にも大変効果的で、学生時代にあんなに苦戦したショパンのエチュードがスムーズに弾けて、自分でも驚きました。

「謙虚な気持ちを持って、音楽を仕事にできることに感謝することを忘れない」

先生からいただいた大切な言葉です。私は毎年手帳を新調したら、必ずこの言葉を最初のページに書いていつも大切に持ち歩いています。

毎年手帳に書いている言葉
指導の変化―基礎を大事に、よい所を伸ばす

指導者ライセンスの勉強を通じて、「良い音楽は良い指づくりから」と実感したので、現在は、小さなお子さんから大人の方まで全ての生徒さんに、個々のレベルに合わせて「指セット」をしっかり教えるようにしています。そして限られた時間の中でいかに効率的に分かりやすく、その子の良いところを音楽的に伸ばしてあげられるかを考えながら指導するようになりました。

また、小さなお子さんの指導実技や他から移っていらした生徒さんのレッスンをしてみて、曲は弾けるのに音符が読めない生徒さんが意外といることに気が付きました。自身の生徒さんたちには習い始めから音の高低をしっかり身につけさせ、ヘ音記号〜ト音記号までの4オクターブはスラスラ読めるように指導しています。できて当たり前だと思っている事が意外と見逃されていたりするので、長く楽しくピアノを続けてもらえるよう、些細な事も気をつけてみるようになりました。

400マス練習,100曲カード達成の生徒さん
ライセンス受検を通して学んだこと

指導者ライセンスを受検して学んだことのうち、特に大きかったのは次のことです。

  • いくつになっても挑戦できること
  • 恥をかくことで必ず成長できること
  • 生徒の良いところを見つけて伸ばす指導
  • 良い音楽は良い指づくりから

ライセンス全級取得は、ゴールではなく、スタートだと思っています。これからも学びの場を広げ、一人でも多く方にピアノの楽しさを伝えていける指導者になりたいです。ライセンスを受けた事で、自分自身がまたピアノに向かう時間も増えました。最近持ち運びのできる電子ピアノを購入し、娘と二台ピアノでショパンのコンチェルトを練習しています。お教室でも、コロナ禍から日常が戻ったらレッスン以外での生徒さん同士の交流の場をまた沢山作っていきたいと思っています。

娘と2台ピアノ
受検される方へのメッセージ

指導者ライセンスは、指導者の視点から見て必要な勉強が、様々な角度からアプローチできるようになっています。受検を迷っている先生は、まずはできそうなところから一つずつチャレンジされる事をお勧めします。指導者としての引き出しが増え、学べること、教えることの幸せを改めて実感できると思います。

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