ピティナ・指導者ライセンス
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Vol.27 渡部昌美先生「オンラインならではの指導実技」(2020年度全級合格)

合格体験記
vol.27
渡部昌美先生

埼玉県比企郡/指導会員/2020年度全級合格

指導27年目にしてピティナに入会

地元の埼玉でずっと受けてきたコンクールの開催が次々となくなったため、生徒たちの力試しの場を求めて、ピティナのコンペティションを受けてみようと、指導歴27年にして初めてピティナに入会したのが2018年のことでした。

入会していただいたチラシを見て、たくさんの種類の企画がされていることに驚きました。早速出かけたのが、レッスン見学でした。たまたま隣に座られた先生が、「指導者ライセンスを受けてみようと思う」と仰っていて、どのようなものかと、早速指導者ライセンスの説明会に出かけてみました。

4つの科目全てが、ピアノ指導者に必須な内容

その日の指導者ライセンスの説明会の講師は、渡部由記子先生でした。先生のお話を伺って、指導者ライセンスの受検の4つの受検科目全てが、どれもピアノ指導者としてまさに必要なスキルだと思ったので学びたい、と思ったのが、受検を決めた第一の理由です。もう一つの理由は、由記子先生のお話が自分の考え方と似ていて、とても共感できたからです。そして、「家事や介護など、やらない理由はいくらでもあります。やらないということは、一番簡単な選択肢です。まず、踏み出してみないと始まりません。」という言葉に心を動かされました。

同じテーブルの人が、「先生のレッスンを受けることはできるのですか?」と由記子先生に尋ねると、ぜひいらっしゃいと連絡先をくださったので、自分もまずは受けてみようと、レッスンをお願いしました。

渡部由記子先生のレッスン

渡部由記子先生のレッスンでは、先生にコピー譜をお渡しすると、弾いている間にびっしりと、1回目はピンク、2回目は水色などと色分けをして書き込んでくださいます。「これを全部やれば受かります」と仰って、それはとても大変なことだったけれども、逆に「これができるようになればいいんだ」と、やることがはっきりしたように思います。受検の本番でも、由記子先生に書かれたことを思い出してやろうと考えているうちに、緊張する暇もありませんでした。

レッスンで衝撃を受けたのは、自分が「どの方向に音楽を持っていきたいか」をうまく言葉で説明できない、ということでした。歌ってみる、弾いてみる、ということはできる。でも、言葉で説明しようとすると、言葉につまってしまうのです。すると由記子先生は「では、生徒さんにはどう言ってあげるの?」と問われ、はっとしました。

私と同じように、ピアノの先生になっているような方々は恐らく、小さい頃は初級の曲は1,2回で〇をもらい、通り過ぎた感じの人が多いのではと思います。ですから、初級の曲で、1つの曲に真剣に向き合う経験をしていないのです。そして、初級のことで、できない、音符が読めない、本当にわからない子に対して、どう声がけをしたらよいのか、というのが実は一番難しいのです。ライセンスの勉強を通して、初級の曲をこんなに一生懸命弾いたのは初めてでした。由記子先生が弾いてくださるのを聴くと、同じ曲だと思えないほど素敵で、涙が出てきました。自分はそう弾いたことも、弾こうと思ったこともなかった、と、帰り道は泣きながら帰ったものです。

知識と生徒との間をつなぐもの

筆記試験の勉強も、もともと和声やソルフェージュはパズルみたいで好きだったのですが、その知識を踏まえて、生徒にどう教えてあげればよいのか?その間をつなぐ、声がけや指導法といった力が欠如していたことに気付き、反省しました。筆記の対策にはeラーニングを活用しましたが、特に西尾先生のアナリーゼ指導法がとても役立ちました。これが分かっていなかったら、生徒を教えられないな、そういう所をしっかりとついてくる。さすが出題される先生だと思いました。勉強すればするほど、「勉強しない先生に学ぶ生徒は不幸だ」と感じ、学びに熱が入りました。

ライセンス受検がきっかけで、オンラインレッスンを始める

2019年度から受け始め、2020年度にはコロナ禍になってしまいました。指導者ライセンスの筆記試験もオンラインでやる、ということが知らされ、そのためにレッスン室のオンライン環境を整えました。それがきっかけで、自分のレッスンにもzoomでのレッスンを取り入れ始めました。eラーニングで視聴していた菊地裕介先生が、ピアノの鍵盤を俯瞰するようなウェブカメラを活用されていて、とても分かりやすかったので、レッスン室の天井にもウェブカメラを設置し、使い始めました。自分で考えられるアイディアには限りがあるので、こうして、オンラインセミナーなどで得たアイディアは、貪欲に取り入れることにしています

天井のウェブカメラで鍵盤全体を映す

今いる生徒さんの中には、「オンラインだからやる」という人も出てきました。車椅子の方とか、遠方の方などです。大人の方で、「近所でピアノを習うのには抵抗がある」と、わざと遠くでオンラインレッスンをやっている先生をホームページで検索して来られた生徒さんもいらっしゃいます。コロナ禍でオンラインが進むことによって、以前では考えもしなかったような、ピアノレッスンの在り方が可能になってきました。私の場合は、ライセンスを受検していなければ、オンラインレッスンを始めていたかも分かりませんし、今の生徒さんたちとのご縁も、新しいレッスンの形も生まれませんでした。コロナだからとあきらめずに、前向きに挑戦することが大切だなと思いました。

オンラインレッスンの様子
演奏実技の録画は試し撮りを

オンラインでの演奏実技は、YouTubeに演奏動画をアップして提出する形でした。実際に少し録画して確認してみると、カメラに映る範囲や角度を考えて設置したつもりが、今度はエアコンの吹き出し口に近く、エアコンの音がうるさく入ってしまっていることに気付きました。上級は20分近い演奏になるので、体力的にもハードで、全て弾き終えた後に気付かなくてよかった、と心から思いました。ぜひ、試し撮りをしてチェックしてから本撮りをされることをお勧めします。

後日開催された、受検生の座談会では、オンライン演奏実技では、会場での演奏実技のように、時間でチーンとカットされない、至近距離での審査員の視線に緊張しなくてもよいなどのメリットも話題になっていました。私自身は、会場での受検では、当日は演奏の緊張感よりも、会場に着くまでの間に電車が止まったらどうしよう、などの心配による緊張感の方が大きく、そういったことを気にせずに演奏に集中できることがよかったと感じました。

オンラインならではの特性を活用した指導実技

オンラインでは、中級・上級の筆記試験、中級指導実技、上級演奏実技と初見を受検しました。オンラインの指導実技では、zoomのギャラリービューに、自分と、モデル生徒さん、審査員の先生方がそれぞれ映り、お互いにモニター越しにレッスンや審査をする、という形でした。

私は、この「オンラインでの指導実技」という特性を活かそうと、思いっきりオンライン仕様のレッスンを楽しむことにしました。自宅のレッスン室でしたので、天井から鍵盤全体を映すウェブカメラと、手元で動かせるウェブカメラ、会話をするパソコンとを駆使し、ウェブカメラで手元や足元をアップで見せたりしました。コロナ禍では、対面レッスンだと以前よりも近づけなくなって、近くでよく見るということがしにくくなってしまっていますが、可動式のウェブカメラでは、見せたい所を、実際にはできないくらいドアップで見せることができます。また、オンラインだと音が割れてしまうので、指摘しても分からない場合があると思い、オンラインの中でも伝えられることや、効果的な伝え方を選ぶように心がけました。

手元のカメラで楽譜や指をアップに
これから受検される方へのメッセージ

ライセンスの受検に取り組んでから、生徒に「先生、うまくなったね」と言われました。「一緒に上手になろうね」と言っています。現在生徒さんには、年中さんから70代の方まで、様々な方がいらっしゃいます。ライセンスの受検を通じて、同じことでも、生徒さんによって言い方を変えるなど、引き出しが増えたと感じます。ちょっと踏み出せば、私でもできたのだから、皆さんもっとおできになると思います。

オンラインでの受検に躊躇されている方もいらっしゃるかもしれませんが、このようにオンラインのメリットを色々と活用することもできます。全国には素晴らしい先生方がたくさんいらして、そのアイディアをどんどん共有してくださっているのですから、コロナであきらめず、真似できるものは真似して、取り入れられるものはどんどん取り入れていっていただけたらと思います。


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