Vol.24 髙田美保先生「知識に基づく説得力ある指導を」(2019年度全級合格)
埼玉県熊谷市/指導会員/2019年度全級合格
ピアノ指導歴は25年あったものの、子育てや50名の生徒のレッスンなど、日々の生活に追われて自分の練習がおざなりになっている状態にずっと焦りを感じていました。地元の先生方と20年ほど指導法や楽典の勉強会を開いていましたが、子どもたちが成長して時間に余裕ができたのを機にピティナに入会し、その時初めて、指導者ライセンスがあることを知りました。
人前での演奏に苦手意識を持っていたので、少しでも克服するために挑戦してみようか、という気持ちが芽生えはしたものの、周りが若い先生方ばかりだと恥ずかしいなと、当初受検に消極的でした。しかし、指導者ライセンスのホームページで全級合格者の方々の記事やコメントを読んでみると、ベテランの先生方も多数挑戦されていて、皆前向きにスキルアップを目指されていることに刺激を受け、私も挑戦してみようという気持ちになりました。
演奏実技に向けては、レッスン見学でご縁をいただいた丸山京子先生や、支部総会で面識を得た服部真紀子先生にもレッスンをお願いしました。また、勉強会のメンバーに演奏を聴いてもらったり、ホールを借りて弾きあい会を開いたり、公開レッスンに参加するなどをして、人前での演奏に対して度胸をつける努力をしました。
指導実技、筆記試験、小論文に向けては、色々な講座に参加し、本を読み、eラーニングを受講して、それを復習してきちんとファイルにまとめるという作業を続けました。
特に印象深かったのが、赤松林太郎先生と西尾洋先生の講座です。赤松先生の講座では、ヨーロッパの歴史、習慣、キリスト教の教え、気候や言葉による音楽の違いなどなど幅広い知識に基づいた解釈を解説いただき、「だからここはこのように演奏するのか」「これを知って演奏すると楽しさも倍増するだろうな」と感銘を受けました。
西尾先生の講座では、「和声の知識があると、特別な響きを見つけることができる。だからここはこういう演奏をしようと特別な表現をしたいと思う事ができる。そのような考え方ができると音楽をさらに楽しむことができる」というお話が強く印象に残りました。お二人のお話を伺って、知識に基づく説得力のある指導が私にもできたら、という想いを強くしました。
指導実技では、短い期間の中で課題曲を何曲もアナリーゼし練習して準備しなければならなりません。しかし、上級指導実技の課題曲に今まで聴いたこともない曲があり、その曲の準備に時間をかけすぎてしまい、受検本番では、弾いたことがあり油断してほとんど手をつけていなかった曲が当たり、失敗してしまいました。
指導実技の本番では、初めて聴くモデル生徒さんの演奏へ、指定された時間内で指導する力が問われ、いかに効率よく、的確にレッスンを進めるか、自分の生活やレッスンを見直すきっかけとなりました。
丸山京子先生には、ライセンス全級合格後も、先生が主催される教材研究会に毎月Skypeで参加させていただき、学びが続いています。ライセンスのレッスンでは、四期の演奏法の違いを丁寧に教えていただきましたが、教材研究会でも、その時代の風習や楽器の違いから、装飾音符の弾き方など演奏方法がどのように変化していったのかなど、その時代の歴史を感じながら楽しく学ばせていただいています。
また服部真紀子先生には、ライセンス受検に直結することだけでなく、フランスのノアンのピアノセミナーにお誘いいただき、ショパンの名曲の数々が生まれたジョルジュ・サンドの館やドビュッシーの生家を見学したり、イブ・アンリ先生のレッスンを聴講させていただくなど、興味の広がる経験をさせていただきました。
こうした両先生との素敵なご縁も、ライセンス受検を決断しなければ叶わなかったことと、前向きなチャレンジで得た出会いに感謝しています。
今後とも、ライセンス受検を機に学んだ、四期それぞれの時代背景と和声の知識をさらに深め、偉大な作曲家の息吹、独自の世界観、その時代の空気までも感じる感性、楽譜を読み解く術を磨き、生徒に知的好奇心を与えられるようなレッスンを目指していきたいです。
「自分の指導力や演奏力をスキルアップさせたい」という思いはあっても、年齢を考え「今更試験を受けても…」とライセンス受検には当初消極的でした。でも、「何かを始めるのに遅すぎることはない!やらずに後悔するのは嫌だ!」という思いが強くなり、勇気をもって一歩踏み出し、その結果、知識が広がり大切なご縁をたくさんいただきました。何もしなければ、苦労や失敗を経験することもないでしょうけれど、得るものもありません。年齢がネックになっている方も、是非チャレンジしてみて欲しいと思います。
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