ピティナ・指導者ライセンス
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Vol.17 安齋 周先生「得るものを目ざとく探して糧に」(2019年度全級合格)

合格体験記
vol.17
安齋 周先生

埼玉県入間市/指導会員/2019年度全級合格

きっかけ―演奏スキルと指導に必要とされるスキルは違うことに直面

日本で音大大学院まで修了し、その後すぐにドイツで入試を受け留学、4年間勉強をして帰国。さぁこれからという時に、これまで学んできた演奏スキルと指導に必要とされるスキルが違うということに直面いたしました。演奏活動もそうですが後進指導も自分にとっては夢のひとつでもありましたので、指導法については帰国後間もなく色々な場で勉強をさせていただいておりました。恩師のような音楽家・指導者になりたいという一貫した想いを持つ一方で、指導する場を得るため就職をしなければ…ということでピティナの福田専務理事にご相談させていただいた時に、まずこの指導者ライセンスを受検することを勧めてくださったことがきっかけです。

「責任のある指導力をもったピアノ講師」となるために

どんなジャンルにおいても指導者というのは常に責任がついてきます。特に、初心者の子供を対象とする場合にはその生徒さんの人生を左右することにもなりかねません。例えば学校教師になる場合には教員採用試験があり、それまでにも教育実習や指導論についての学習などがあります。音楽はどうでしょう?音楽大学を卒業してそのままピアノ講師、あるいは学生でも指導を行えてしまいます。音大卒でなくても、特に資格もハードルもなく、やろうと思えばだれでも「ピアノ講師」を名乗り指導を行えてしまう状況です。実は大学院修了間際に当時の大学の教授から、附属の音楽教室で講師をしてみないかとお誘いを受けたこともあったのですが、今思えばあの時点でお受けしていてはとても責任のある指導はできなかったと思います。この指導者ライセンスというのはそんな中で登竜門のようなものに成り得るのではないかと思っております。むしろこうした検定を経てしっかりと鍛え上げられた上で指導を始めるべきなのではとさえ思います。

人間の成長は子供のうちが最も著しいものです。その時期にいかに良いレッスンや良い体験をさせられるかがとても重要になってきます。指導者の学びが足りないために生徒さんの学びも停滞し、貴重な時期の時間がどんどん過ぎてしまうのはとてももったいないことです。「だれでもなれるピアノ講師」ではなく、「責任のある指導力をもったピアノ講師」となるためにも、こうした検定はより活用されるべきだと強く思います。

フランスのノアン地方でのジョルジュサンド博物館でのコンサート
原動力は「もっと向こう側のことを知りたい!」という好奇心

実のところ私にとって指導者ライセンスを受けるための準備は特別大変と思ったことはありません。演奏と同様指導についても常日頃から研究・勉強を続けており、いわば高校までの中間試験・期末試験のような感覚でおりました。指導実技に関してだけはさすがに要領がわからずにおりましたので、たまたま全級取得をされていた先生とお付き合いがありシミュレーションとなる勉強会に参加させていただいたこともありました。

「勉強をする」ということについて、ついついマイナスイメージやがんばらなければ!と思ってしまうこともあるかと思いますが、自分の好きなことを学ぶのに一番原動力となるのは「好奇心」だと思っております。ですので、筆記試験内容についても、演奏実技のプログラムについても、指導実技、エッセイについても、今まで自分の中になかったことを学ぶ際にはとてもうれしく思いましたし、そこから更なる好奇心で「もっと向こう側のことを知りたい!」という楽しみの連続で臨むことができました。好きなことについて学べるというのは幸せなことだなと感じております。

他の受検者の指導実技の様子から学べるのもライセンスならでは

指導実技についてですが、他の受検者の方の試験の様子を見られるということがなにより勉強になりました。ひとりひとり臨み方や精神的な面でも様々で、各々のキャラクター的なものもありますが、どういう姿勢で受検をされているのかというのはもちろんのこと、普段この方はどういう指導をしているのか、というのもよく見えてきます。そこから取り入れたいと思うこと、反面教師とすることもあり、自分の学びに生かすことができました。

自分自身の様子を客観的に見ることはなかなか難しいことだと思いますが、こうしてあらゆるパターンの事例を目にすることができるのも、検定の場ならではではないでしょうか。また、最後には審査員の先生方と輪になって座ってお話できる場もあり、そこでのディスカッションや一人ひとりの様子も大変色々と参考になることがありました。

「常に勉強をし、古きものだけでなく新しいものについても考え、あらゆる状況に前向きで楽しむ」という姿勢

指導者ライセンスの受検を経て、自分の中で変化があったか…と考えてみると実はあまりありませんでした。というのは変化ではなく「確信」に変わったといったほうが正しいからです。私には理想の指導者像というのがいくつかあります。大学で教えていただいていたコンスタンティン・ガネフ先生、留学中から帰国後も演奏法、指導法両面で学ばせていただいていた横山幸雄先生、帰国してからお世話になっている小林仁先生、加藤一郎先生、個人的に公私共に仲良くさせていただいているピアニストのパスカル・ロジェ先生、皆様に共通することとして、「常に勉強をし、古きものだけでなく新しいものについても考え、あらゆる状況に前向きで楽しむ」という姿勢です。

ライセンス受検の際にはその精神で臨むことで、受検することそのものが非常に楽しく、初対面の生徒さんと接することもまた楽しみになり、一切のストレスを感じることなくマイペースを貫くことができました。そうして挑戦していくなかで聴講に来てくださっていた方や、指導実技のモデル生徒さん達から声をかけていただくことも多々あり、自分が追っていた理想像はやはり間違っていなかったのだ…とより自信を持つことができました。受検したことにより、今は以前よりも胸を張って楽しみながら指導に取り組ませていただいております。

理想の「演奏のできる指導者」を目指して

私にとって指導者・音楽家の理想像である方々のような、「演奏のできる指導者」を極めていきたいと思っております。途方も無く天高い目標ではありますが、ピアノの世界ではゲンリヒ・ネイガウス、ヴァイオリンの世界ではユーディ・メニューインのような、「本物の音楽家を育てられるような音楽家」を目指したいです。欧米と日本を比べ、ピアノ指導に何が必要なのか、どう違うのか、どのように行うべきなのかということを常に考えながら、今の仕事の立場を利用し、生徒と指導者両方に良い影響を与えられるように精進していきたいと思います。

これから受験される方へ~得るものを目ざとく探して全て糧にして

何かを始めるという時に、「自分にとって得られるものがあるのか」「これをする意味があるのか」と考えることはありませんか?ついついそういった思考になってしまうこともありますが、何事も「得るものを探す」ことが大事だと思っています。このライセンス受検にもそこら中に得られるものが転がっています。目ざとく見つけて全て糧にしていってください。

この指導者ライセンスは学生さんでもベテランの方でも受けられます。これからの未来のため、スキルアップのため、新鮮さを取り戻すため、初心に返るため、どんな目的でも挑戦して損はないと思います。

それに、生徒さんというのは指導者にとって色々なことを教えてくれる先生のような存在だと思いませんか?指導実技で全くの初対面で短い時間しか関わることができない生徒さんでも、実にたくさんのことを自分に気付かせてくれます。普段教えている見慣れた生徒さんではなく、新しい生徒さんだからこそ発見できる事、そんな経験がいつでもできる場があるというのはとても嬉しいことではないでしょうか。まだまだ目指せる高みがありそうだ…と感じられることの喜びを感じながら挑戦をしていく、そんな楽しい検定にぜひとも積極的に臨み、ライセンス取得を自信にしていってほしいと思います。

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