指導者ライセンス交流会開催レポート
2020年6月26日(金)に開催した「指導者ライセンス受検者の交流会」では、16名のピアノ指導者の方々にご参加いただきました。指導者育成委員であり、オンライン演奏実技の審査員をおつとめいただきました、西畑久美子先生をお迎えし、指導者ライセンスの選曲方法やレッスンについてのお悩み、今後のイベント開催などについて幅広く参加者との意見交換をいただきました。今回はその一部をご紹介します。
今回初めて指導者ライセンスに参加しました。初めて会った生徒さんへの指導実技の心得を教えてください
まずは生徒さんの演奏の問題点を見つけていただくこと。そして、見つけていただいた問題点について、どのような方法でアプローチすると生徒さんに響くのかを考えましょう。その先生の指導で生徒さんの演奏が改善されたか、ということが一番の審査ポイントです。指導の場ですので、自分がその曲のアナリーゼを頑張ってきたことをアピールするのではなく、その知識を生徒さんへの指導に活かせているといいですね。 確かに初めて会う生徒さんではありますが、きっとご自身の生徒さんの中に、似たタイプの子がいらっしゃるのではないかなと思います。ファーストコンタクト、またその生徒さんの演奏から、普段のレッスンの感覚を思い出していただき、予測を立てていただくと落ち着いて指導できますよ。 人前ですと、緊張して楽譜をずっと見てしまいがちですが、生徒さんの姿勢、足、重心のかけ方について一緒に観察して、すこしでも素敵になって帰ってもらおうと思って指導してみてください。10分間で最低1つ、できれば2つ、生徒さんの演奏が変化したポイントがあれば理想ですね。
演奏実技の選曲のポイントを教えてください。
4曲弾くうち2曲は過去にステージにあげたことがある曲、自分の体に音楽がしっかりと入っている曲を選んでいただくと、全体の仕上がりが良くなり、余裕が出てくるかと思います。また、弾いていて心がときめく曲、というのを1曲入れてみましょう。「きっとこの曲が大好きなんだな」という演奏には、先生の魅力・個性がプログラムからにじみ出てきて好感が持てます。また4曲を通して弾くので同じ曲調の曲ではなく、それぞれ別のキャラクターを感じられる曲を持ってくると、プログラム全体にメリハリが出てきます。オンラインの演奏実技ではカットがなく再現部も演奏いただくので、特に意識してみてください。
本番に緊張しないコツを教えてください。
音楽は緊張と弛緩のバランスでできているので、いい緊張感は演奏にはとても大切です。たとえばいつもは弾けている箇所で指がもつれてしまったり、うまくいかないと感じている場合は、息が浅くなっていることが多いと思います。深い呼吸を意識してみると落ち着いて演奏できることが多いです。ご自宅での練習でも呼吸に意識を向けてみてください。
これからピアノ指導を始めたいと思っています。ピアノって楽しい!と生徒さんに思ってもらえるにはどうすればいいでしょうか。
ピアノの楽しさ、醍醐味というのは単旋律から二声、三声と音が重なりあっていくところ、また和声の移り変わりを感じられることだと思います。でもやはり、そこへ発展させていく指導が難しい、という声を聴くことが多いです。各地で開催されているセミナーを活用して、自分の指導の幅を広げていってください。
自分の演奏も、生徒さんへの指導も変えていくのに時間がかかります。1回でポイントをつかむコツがありましたら教えていただきたいです。
何事にもゆっくり時間がかかるとおっしゃる、というのは引き出しが多く、表現が豊かな方が多いと思っています。何事もスピード感が求められる世の中ですが、時間がかかるから自分はできないのだと思わないことです。レッスンでは、生徒さんが帰ったあとに、「あの箇所を指摘してあげればよかった」「こうやって声掛けをすればよかった」と気づくこともあると思います。気づきはメモして、生徒さんごとにまとめていきましょう。それを振り返ったとき、指導方針が自然と見えてくるはずです。生徒さんを目の前にすると、どうしても熱心になってしまいがちなので、自分の指導を客観的に振り返る時間も必要ですね。
西畑先生にとって、「ピアノ指導者」という職業の魅力とは?
できないことができるようになりたい、という成長欲求が人間にはあると思います。昨日できなかったことが今日できるようになった、と毎日成長を繰り返している生徒さんは本人もうれしいし、保護者の方もきっとうれしい。そうやって人間として成長していく姿にかかわり続けられるというのが一番の魅力だと思っています。「先生に出会えてよかったです」という一言で、また指導を頑張ろうと思えます。
ピティナでは、学び続けるピアノ指導者の先生方を応援しています。
ピアノ指導者になってみたい、指導者としてさらにステップアップしたいという皆様の、「ピティナ・ピアノ指導者ライセンス」へのご参加をお待ちしております。